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逆行日記<第6話>

〜多感な時代 part1〜

竹宮恵子と増山法恵
夢は叶えられ、上昇していく
気流をさぐりあてたら出来るだけ長く、永くサーフィンしていたい
中学時代は箱の中にいるようだった。
無邪気に外で遊ぶのをやめ、仲間も学習も学校という枠で囲われた。
10代のエネルギーを燃焼させるのは自分も周りも大変だ。
あの頃は大して不満に思わなかったが、中学、高校はなんと窮屈な世界だろう!
協調性が育つと同時に、ここで大半の独創性が失われたに違いない。

試験が近づくたびに、私は海馬のように、まず、ごろ寝をした。
昔も今も、興味が持てない事はさっぱり頭に入らないのだ。
そんな時は何かに逃避せずにはいられない。

本当になんとなく、否、しょうがなく手にしたものが
私を人形の世界へゆっくりと導いてくれた

居間に積まれた雑多な本の中からマンガを引き抜いて、だらだら読むのが 試験前の私の日常だった。
竹宮恵子「地球へ・・・」
竹宮恵子「風と木の詩」
竹宮恵子「変奏曲」
なんでこのヒトのしかないわけ?
ちょっと前にSFマンガ「地球へ・・・」(朝日ソノラマ刊)はアニメーションに劇場映画化、公開されていて、私はテレビでそのコマーシャルを何度も見ていた。

オンナがSF書くんだ〜。なぜだか地球を「テラ」と読ませる。
スかしてて変なの〜。絵も好みじゃないし・・・やめとこ。
(ほんとにもー、すいません竹宮様っ! ひねた小娘でした)
手にとってパラパラ、ページを捲ったものの、結局その十数冊の漫画本は 積み重ねた山が崩れようと、そのままの形で3〜4ヶ月の間、つまりは 次の試験の時まで(もっとかな?)、部屋の隅に放置されたのだった。
(その間に私を捉えたのは梅図かずおの「漂流教室」だった)
そしていよいよ家に気晴らしの漫画本がなくなった時・・・
ま、いいか、竹宮恵子で。
丸顔に、大きく虚ろな目も、にぎやかすぎる構図も、そのうち慣れるに違いない・・・。


これが大当たり!! 思い返すと、私はこれら3つの傑作をワクチンのように接種していた。
趣味や価値観が周りとずれていくことも案外平気になり、のほほんと 自分らしさを通していた。

ただ断れば、一見して透明な器にわざわざ泥を盛ったような、摩訶不思議な印象を竹宮恵子のマンガに感じ、躊躇っていただけに、踏み込んだらたちまちその世界に心を奪われた、とかいうドラマチックなものではなかった事を特記したい。
それは気づかない間にじわじわと染みこんでいたのだ。(こわいぞ〜)

主人公たちは大抵、八方塞がりな状況にいて、時々遠くを見つめている。
脇役もまたユニークで、その立ちまわりがとても素敵だ♪
作中の誰もが心中熱く、傷つきやすく、したたかで、立場や状況によって、強者弱者の関係がめまぐるしく転じている。
人の多面性を痛快に表現する、凄いマンガだわー!と思ったのだ。
そこには、セリフを実際声にして、掛け合いを試してみたくなるような、フィクションならではの溌剌とした名場面がたっぷりと詰まっていた。
(とりとめがないので、この話はまた別の機会に)


私は夢見がちで、やけにシビアな性格だった。(今もかな〜苦ーっ!)
作品に対し熱烈に恋することはあっても、その作家の全てが好きになるわけではない。何て言うから、シ・ビ・アー!

〜なはずなのに、竹宮恵子の作品なら、何でも買っちゃう♪
イラスト集も、ポスターも、レコードも!!
まだないですか? もっとないですか!? 買います、揃えます〜(笑)

懸賞グッズを当てる対策も怠らない。
自分の席から肩をたたける範囲のクラスメイトに葉書を渡して、丁寧に愛らしい字で宛名を書くように見守り、即回収した。
余白が気になれば、お花を描きたし、仕上げに蛍光ペンで枠を引いた。
それを学生カバンのポケットにそっと落とし入れて、下校時間を待った。
(結果は惨敗)
後にも先にも、こんな経験はもうないような気がする。望んではいるけれど。人生で貴重な”盲目的なファン”体験。ああ多感な少女時代♪
本当に好きでしょうがなかったのだ・・・


〜で、ついに私はファンレターを書いた。
但しポストに投函できたのは今から3年前だ。
人形展やります・・・(いったい自分は今いくつだい!)



そんなことが起こるのだろうか・・・叶っていいのだろうか?
雲上の人が羽を休めに訪れた。
増山法恵さんが私の人形に興味を持って接してくれたのだ。
当時の竹宮作品の誉れ高いブレインで、あの名作「変奏曲」の原作者だ。 西洋の芸術、文化に通じ、「風と木の詩」の全ストーリーを作者以外に唯一語れる存在だと読み知っている。(口は堅いだろうが(笑)) 竹宮ファンであれば腕をつかまえて揺さぶりたくなるビッグな人だ。

そのご本人がこの程、公式HPのオープンにあたり、近々趣味の”人形の部屋”の中で私の作品を紹介してくれるというのだ。
とっても嬉しい♪ あたたかいご支援に感謝しています!
安っぽくなるから、これ以上は言わない。

増山さんは今後、HPの中で「変奏曲」の続編を小説で発表していくという。
マンガ「変奏曲」(朝日ソノラマ・サンコミックス)は、竹宮恵子と連名でわずか単行本3巻と一冊の番外編でペンを置かれているが、作中の登場人物の強烈な個性は、クラシック音楽界という舞台の上のみならず、コミックス界の不朽の名作・キャラクターとして歴然と輝いている。
あのエドナン、ウォルフ、ボブ達が♪ それともニーノとアレンの物語?
いったいどんな小説になるのだろう!? 今からもうドキドキだ***
皆で久方ぶりの大舞台、連載小説の幕開けに期待していよう!


<文章中の敬称は敢えて一部省かせていただきました>


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