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逆行日記<第4 話>

〜I love Debussy!part 2〜

3話に引きつづき、私はドビュッシーのファンです。
でもマニアではありません。まだ聴いていない曲が結構あります。
声楽は盲点です。もともと特に音楽好きというわけではないのでクラシック音楽の醍醐味である演奏家や指揮者による聴き比べもやりません。遠い昔にそんな事もしかけましたが。
機会さえ与えられれば、今でも喜んで楽しみますけれど。
普段は気に入ったCDを只ひたすら繰り返し聞くのみ。
私はそれでも満足なのです。
まずこのことをはじめに断っておかないと本物の好事家に小突かれてしまいますからね。
それでもやっぱり筆頭、ドビュッシーのファンでです。
ちょっとくどいですが。

私のキャパシティは小さくて、既存の知恵に連結できる内容だけが嵩を増します。蓋を開けると相当古いデータばかりで今となってはガラクタと化した宝物。
流行をとらえるアンテナはとっくの昔に根元から折れていて地面に刺さっているみたい。ブンブン唸っている自分にふと気がつき、これではいかん!と思いはしますが、さてどうしたものでしょう。
へへん。どうせ懐古趣味の人生だも〜んと居直る毎日です。
そんな持って生まれた気質が幸いして(性格は良い面でみませんと)他に大した楽しみを見出すこともなく人形制作を続けていられるわけですが、趣味に徹するあまり一般の常識には手を抜く、と言うより無視してしまうヤな性分。
そうして凝り固まった感覚を解きほぐしてくれるのがドビュッシー様なのです。

ドビュッシーの音楽は明度や色彩に富んでいます。
雄大な大気の中にミクロのさざ波が自由気ままに往来して一節な時の流れを綴っています。
繊細なモチーフを集結させて大胆に構成する!これが私の壺でした。
大好きな作家は皆その魅力の持ち主です。

中学時代、ピアノがお得意で音大志望の女子(女史)達は皆挙ってショパン好きでした。
彼女達は大抵ドビュッシーの音楽を眠いだの、暗いだの、簡単だのとマジメに取り合ってくれなかったのです。

でも私もショパンの*「幻想即興曲」をカッコよく弾くことを夢見ていましたから、それは別に大した問題ではありませんでした。
*薬指が寝てしまい、この野望は叶えられずに終わりました

中学2年生の時、友達の一人からドビュッシーのピアノ曲「ゴリウォーグのケークウォーク」を聞くと因間が思い浮かぶのよーと言われたことがありました。そんな曲があったわけ!
敬愛している巨匠の曲と自分に共通点がある!?
それって「沈める寺」みたいに東洋的な和音が心地よい曲?
それとも「亜麻色の髪の乙女」風かしら?とワクワクしながら妙なカタカナのタイトルを落書きだらけのノートに大きく書き留めて早々と帰宅しました。もしかしたら家に有りはしないかと。
レコードの束を荒らしていると(またもや登場)傍観していた兄が新盤らしいLPを上下に振って手招きしました。
青地にドビュッシー様の黄色い横顔を配置したカバーはまるで地球をパネルにしたようでした。

ラッキー♪
冨田勲のシンセサイザー「月の光」の中にその曲はありました。
おおお。ゴリウォーグのケークウォーク!
LP盤の螺旋の僅かな隙間を数え、プレイヤーの針を慎重に落として耳をすまして・・・
そして・・・ショック!・・・で声が出ないって、この事でしょう。
「小さい黒人のサンボの踊り(まどろっこしい)」が脳天を直撃し、右往左往しました。

タリッタラッタ。ッタリラリ〜。ッタリラリ〜。ジャンッッ♪(快速)

兄はせせら笑いました。
冨田勲の編曲はとにかく凄まじかった。あんまりよォ(涙)
人が見ているアタシのキャラクターってあんまりよォ(涙)
でもね、これもご縁でした。
今では数少ない私のレパートリーになっています。いい曲です。

それではending 。
ズンチャッ♪ ドットコ! ズンチャッ♪ ズンチャッ♪
ドットコ! ズンチャッ♪ ズンチャッ♪ ズンチャッ♪ :II

・・・逆行日記5につづくもようです。


ps.
文章と人形は自己のバランスを保持するために分裂することがあります
御了承ください


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