神の手
2005/12/12
先日のアンティークバザールで素敵なリボン刺繍のポシェットを購入しました。1830年代の物ですが驚くほど保存状態は良好です。ビクトリアンだったらバラの刺繍で埋め尽くされたゴージャスなピローケースが買えるお値段かもしれません。でもセンス、テクニックともにここまで魅了されたものは今までになく、この機会を逃せば次のご縁はないと感じたので思い切りました。
59_1134382453.jpg 59_1134382487.jpg
図案、色の取り合わせ、技術、どれをとっても見事です!
リボンでここまで花の品種を巧みに表現したものを他に知りません。小花に1糸、アウトラインを添えたり、くしゃくしゃの花びらがガクから溢れるように立体感を出したり、表裏ともに15センチ足らずの布面に、それも実用品に、なんて贅沢な仕事をしていることか!
私も「マルメゾンの思い出」のドレスには極力手刺繍を入れたいと思い、試みてはいましたが、アンティークのレースや刺繍と見比べてしまうと自分の仕事は2週間かけても大味を否めません。
でも懲りずにリボン刺繍は挑戦したいと思っています。手芸好きの友人が早速テキストを取り寄せてくれています。楽しみです。
それにしても手芸の評価は古今東西を通して低く過ぎるのではないかとよく感じます。どの手仕事もその頂点は高い芸術性を誇っているものです。手芸万歳! マニアが少ないおかげで時には私でも素敵なアンティークを入手する事ができるのですね。
昨日教室の人に薦められて「独立時計師」のビデオを見ました。
スイスで現在も大事にされている機械式時計の作家たち。腕時計1個がまさに宇宙。部品の殆ど全てが拡大鏡をはめての手づくりです。僅かな手の震えを押さえるために机に歯を当てて、息を殺しながらトゥールヴィヨンと呼ばれる複雑なムーブメントの心臓部(直径はなんと1センチ!)の組み立てに1週間を費やしていました。小さなガラス窓から時を刻む歯車たちが覗けて見えます。最高にエレガントです。耳をそばだてて時計の鼓動を聴くことが出来きる人物は世界一幸せな人に違いありません。
手仕事にはもちろんレベルの違いがありますが、1昨日(教室の後)から翌日の朝にかけて、カルトナージュに挑戦してみました。手芸好きのKさんに終電までお付き合いいただき、こんな素敵なケースが出来上がりました。少年人形用のステッキ入れです。
プレゼントにするつもりでしたが、結局気分転換でつくれるものではなかったので、今後の事を考えて急遽同じ素材で台紙をこしらえました。
59_1134392258.jpg 59_1134392273.jpg 59_1134392705.jpg
ステッキよりゴージャスに仕上がりました。
ちょっと齧るのは楽しいけれど、本気になったら人形制作がますます滞る魔の手芸・・・
程々が肝心です。
戻る