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ゴールディーとお人形

2005/11/17

今日、十数年ぶりに再会したTさんは、私が勤め人時代の同期である。
当初は仲が良かったものの、何が引き金だったのか? 1年を過ぎた辺りから社内に暗雲が立ち込め、順を追うように人は去り、そして誰もいなくなった。もう会う事はないだろう過去の人のはずだった。
そんな懐かしい彼女が今や近県にマイホームを構え、2児の母となっていた。その後も別会社で縫いぐるみデザイナーのキャリアをしっかりと積んでいた。現在は家庭人として仕事を両立させている。彼女の才覚からすれば当然の歩み。豊かな人生。

「これ読んでみて。あなたにもきっとわかるから」とTさんは一見シンプルな絵本を差し出した。
『ゴールディーのお人形』(すえもりブックス刊)作者はM.B.ゴフスタイン。結構有名な作家らしい。用意されたランチをおあずけにして、まるで聖書を読むように、2人とも押し黙って目を通した。

***
亡くなった両親の仕事を継いで人形作家となった娘、ゴールディは、いつもひとり静かに心を込めて仕事をしていました。彼女はある日取引先の「趣味の店」で中国製のランプのあまりの美しさに心を奪われ、買ってしまいます。その価格は彼女の数カ月分の収入にあたる高価なもので、これから尚慎ましく十数体の人形をこつこつと納品していかなければならないのでした。友人に「正気かい?やっぱり芸術家だね、」などと水をさされて傷心するゴールディ。分不相応な買物ですっかり憂鬱になり、家に帰り着く頃には、もはやランプの包みを開ける事も、座る事も、ベットで寝る事すらできなくなってしまうのです。すると彼女に不思議な出会いが訪れます。実はランプは彼女の人形と同じように、誰かのために精魂を込めて大切につくられたものでした。その作り手の暖かい気持ちはお互いを友人のように支え、ランプはゴールディの家、そのものとして潤い幸せになりました。
***

・・・じ~ん。作り手寄りの幻想かも知れないけれど、これとそっくりな体験を私はしている。
仕事場に戻ったら、早速宝物の埃をはらい、時代を経てはるばる私のもとに来てくれた事にあらためてお礼を言おう! 因にそれは人形ではないのよ(笑)。
そして何よりTさんが私を思い出してくれたことに感謝だわ!







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