ガラスのステッキ
2005/04/12
先生、今日は遊びますから!
遅刻して尚、私は不調を全身で訴えながら奥のテーブルに着席した。
ここはガラス教室。先生は気さくな方で「何?口を挟むなってこと?」と笑ってくださった。その一言にあらためて自分の厚かましい態度を恥じた。
集中力が大きく欠けている今、コンマ数ミリが勝負の目玉細工に進歩は望めまい。
だから今日は”美少年ステッキ”をつくるよー。と宙に言い放ったところ、隣の席のH嬢が妙にウけてくれた。
美少年ステッキとは、19世紀末の少年少女のポートレート集からヒントを得たものだ。淑女はパラソル、紳士はステッキでエレガンスを演出している。ボーイは大抵その身長に不似合いな大人の(父上のものと思われる)ステッキを手にして格好を付けている。懐古趣味の人形にこれほどマッチするアイテムはないな・・・よし作ろう!
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それは象牙の杖ではなく、所詮ガラス棒なんですが。
カルピスをかき混ぜたい、なんて間違っても言わないで欲しい。
ステッキの先端をペンシル型に細く形づくるのは意外に難しく、先生に泣きを入れて仕上げていただいた。
最近は目玉(モドキ)がヒビ割れる事もなくなり、徐冷の必要性を甘く見ていた私は、先生の忠告に従わず、嬉しさのあまり即日持ち帰り、次の日、また次の日と些細な衝撃でせっかくのお手製ステッキを2度も折るはめになった。それ見た事か。
幸い、紐を巻いて細工しようとしていた箇所だったので、見た目には問題なく、チープなりにもディスプレイとして使えそうだ。ガラス素材に限らず、遊びの域で装飾小物は色々つくってみたいと思うが、何せ余裕がない。
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ここで敢えて”美少年”としたのはステッキを握ることができる人物が高貴であれという願望に他ならない。そうなると人形たちの役不足が気掛かりとなる。ビジョンを貫きたいが、容赦なく時間の波に溺れてしまう。はたとしがみつくものは、それでも人形なのだから、観念してコツコツとつくるべきなのだ。
絶世の美少年とはどんな姿をしているのだろう。
春が過ぎたら、モードを切り替え、埃が積もった心象レンズの掃除から始めよう。
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