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実話は小説よりぐっと来る

2007/08/06

夏休みお薦め文庫本コーナーで「ボクの音楽武者修行」を手に取った。著者は世界の小澤征爾。(今更なんて言ってはダメですよ)世間の静かなクラシック音楽ブームに乗って、偉大な現役音楽家の青春サクセスストーリーを少しだけ知ることができた。何故だろう?昔から作曲家の伝記は好きだった。数学的とも言える音楽理論を解し、肌で応用し、適材適所に振り分けられた集団が奏でる音を芸術に仕上げる核の人物は万能でなければ勤まらない。天賦の才能を最も必要とされ、栄光に輝いている。
昭和10年満州生まれの小澤さんは桐朋短大卒業後、渡欧のための資金不足で周りから援助などを受け、殆ど無計画とも言えるスクーターひとり旅を実行した。¥がまだ360円以上の(日本?中国のどこらへんにあるの?と真顔で聞かれそうな)時代だ。
それにしても金欠だからってまさか貨物船で渡欧とは!
フィリピン→シンガポール→インド→アフリカ→イタリア→フランス(マルセイユ)。2ヶ月間の船旅が楽しそうに綴られていた。碇泊する港で語学の勉強ができたって、やっぱりすごい人だ。
~で、フランスに上陸してからは、スクーターに日本の旗を掲げ、音楽家である事を知らしめるためにギターを背負って武勇伝は始まった。
やがてパリ現地で聞き知った、棒ふり(指揮者)コンクールの受験資格を滑り込みで得て、各国選り抜き50名程の受験者を押さえていきなり1位を獲得する。言葉のハンディを大げさな身ぶり手ぶりで補いながらオーケストラを指示してステージを沸かせたアジア人。欧州の伝統音楽をどこの馬の骨とも判らぬ小柄な青年が見事に歌わせたのだからヨーロピアンは仰天したに違いない。その後ヨーロッパ各地にOZAWAの名を轟かせながらアメリカに渡り、続け様に賞を得てNYフィルの副指揮者に就任する。ついにはオーケストラを率いて日本公演のために帰国となる。(同オケ、主席指揮者はバーンスタイン)
家族、教師や友人達、本人ともに待ちわびた里帰りの足はJALのチャーター機であった。
渡欧から僅か2年半で成された信じ難い出世劇! スゴ~イ。

因にこの自伝的エッセイが出版(初版)されたのは私が生まれる数年前です。
まだ日本人が欧米では珍しかった時代にいっさい物怖じせず、常に陽気。意欲的で冷静なチャレンジャー(まだまだ現役)であるOZAWAにあらためて感動しています。
本編随所に挟んだ家族宛ての手紙からは青年の活気と優しさが溢れていました。
確かに青少年育成?これを読めば君も前向きになれる推薦図書です。

ところで氏の活動の近況を全く知らないのだけど、その後オペラの評判はいかがでしょう? 



梅雨の間、長雨ニモ負ケズ百合が咲き続けてくれました
夏本番を迎え、今日最後の一輪が散りました
来年も大輪の花が見られますように

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